「からだに良い料理を作るために、厳しい基準で作られた安全な農作物を使いたかったんです」。
都内でオーガニックフレンチの店を18年間経営していた樋口陽子さんは、薬膳料理などを取り入れた安全・安心な料理を提供することを心がけてきました。環境やエネルギーに深い関心を持っていたこともあり、東日本大震災後には復興に役立ちたいとボランティアで福島県内を何度も訪れます。
「ボランティアで訪れた地域の中で、約40年前から有機農業や環境に負荷をかけない農業を実践している人たちがいる二本松市東和地区に親しみを持ちました。長年移住者を受け入れてきたこともあり、考え方も柔軟な人が多いと思ったんです」。
樋口さんは地域のNPO法人ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会のメンバーに誘われて、東和地区で料理教室を開催。都内から通い続けることに。
その後、都内の店をたたみ、2017年3月に東和地区に移住します。母親が住む都内から車で3~4時間以内で行ける場所にあることも決め手に。
地域おこし協力隊員となり生活をスタートさせた樋口さんは、『道の駅ふくしま東和』で自身のキャリアをいかした調理やメニュー開発、桑などの地域の特産品を使った加工品の商品企画、都内でのPRなどを担当しています。
樋口さんが移住するにあたっては、地域の窓口になっている方がいろいろと相談に乗ってくれました。
「移住者のために空き家を紹介していて、住まいはすぐに決まりました。今住んでいるのは、街中の一軒家で、日当たりがいいんです」。
樋口さんは床の修繕に合わせて掘りごたつを作り冬を迎えました。軒先で干し柿をつるし、庭ではハーブづくりにも挑戦。新しい暮らしのなかで田舎ならではの楽しみを日々発見しています。
「春には、家から10分ぐらいで、県内の桜の名所『中島の地蔵桜』を見に行くことができるんですよ」。