山を臨む一面の田畑が広がる会津若松市北会津町で専業農家を営む武藤さんが、実家の農業を継ぐことを決意したのは2011年2月。渋谷のIT企業の代表としてWEB制作業務を率いていたときでした。
片道2時間の通勤時間から解放されたいと感じていた武藤さんが辞職を決心してから行動に移すまで時間はかかりませんでした。
武藤さんが辞表を提出したのは、奇しくも東日本大震災の前日。会津へ帰れたのは研修の始まる前日の3月25日でした。
「東北自動車道の路面がうねっていて、通常3〜4時間のところを昼夜かけて帰りましたね」。
その後、武藤さんは一年間の農業研修を受けます。「親と違う作物を作りたくて、選んだのはミニトマトでした。実は、研修中にミニトマトの出荷伝票を見ちゃって。売上金額の多さに驚いたんです。収益性、将来の需要予測をして、ミニトマト栽培を決めました」。
長年ビジネスで培ってきた武藤さんの経験が、取引先との交渉や、データ管理、商談の場で発揮されています。
「農業は、地質や物理、化学、法律から経理まで何でも知っていなくちゃいけない。特にミニトマトは品種ごとに水や肥料の与え方が違う。味で勝負したいので、すごく頭を使います」。